momomon

個人メモ

吸血鬼×医者(声のみ)①

俺達吸血鬼は、二十歳になるまで他の生き物の血を定期的に摂取しなければ生きていけない。
今では、人間達が金と引き換えに血液を提供してくれるものの、昔は今ほどに人間と吸血鬼の仲は良くなく、吸血鬼達は動物の血を啜って飢えをしのいでいた。
しかしそれでは賄いきれず、吸血鬼達が人間を襲った事もあったという。
今では需要と供給のバランスが保たれ、上手く共存しているものの、皆が皆平等に分け与えられているわけではない。
数は少ないだろうが、金を貰うだけ貰って、血を一滴も飲ませず吸血鬼を瀕死に追い込む奴だっている。
そのくせにその吸血鬼が飢えに耐えきれず人間を襲おうものなら、まるで自分は被害者だという顔をしてテレビのインタビューを受ける。
少しでも役に立ちたくて私の血を提供する事にしました、お互い助け合って生きていくべきです、と、偽善的な笑顔を浮かべ宣言する人間達。
給金制度が無くなり無償提供になったなら、果たしてそのうちの何人の人間が血の供給を続けるだろうか。
強欲で、ずる賢くて、利己主義自己中心的。

だから人間は嫌いだ。

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(目が回る……)

目に映る世界がぐにゃぐにゃ歪んで、気持ち悪い。
気付けばもうとっくに夜で、でも近くに街灯なんか無くて、余計に目の前が真っ暗だ。
一体ここはどこなのか。何日も宛もなく歩いて来たもんだから、そんなの分かるはずがない。
ぐるぐる周り続ける視界に耐えられず、俺はとうとう、車どころか人通りも一切無い道路の端に倒れ込んでしまった。
起き上がらなければと思うのに、あちこちに骨が浮き出て来た体は、もう1mmも動きたくない、と、脳から伝達される起き上がれという指令を遮断した。
もうこのまま死んでもおかしくない。
むしろ死なない方がおかしい。

(二十歳まで、あと一年だっていうのに、な)

決して楽だったとは言えないけれど、この年齢まで五年近く、人間に頼らずに生きて来たんだ。
あと一年くらいどうにかしてくれよ。
死ぬのが怖い、というより、やはり人間の力を借りないと生きていけないのだと思い知った悔しさの方が、何倍も強い。

血液提供システムを利用していた頃、俺のパートナーに選ばれた人間がクソだった。