momomon

個人メモ

死神×自暴自棄 リスカ・流血表現①

一世一代の恋だと、思った。
相手は十歳年上のサラリーマン。俺はまだ高校二年生の餓鬼だったけれど、俺はこの人と添い遂げるのだと、妙な確信があった。
性別や年の差なんて関係ない。俺達にはそれを乗り越えられるだけの愛がある。例えばこの地球の全てが敵になってしまっても、この人が居てくれるのならば、俺はきっと海の底でだって生きていけるだろう。
そしてこの人も、俺と同じ様に想ってくれている。
だから、暗闇の中に身を投じる事なんて怖くなかった。

珍しく、丸一日俺の家に誰もいない日があって、たまにはうちでどうかと彼を誘ってみた。
彼は渋ってはいたものの、いざ広い家に二人きりとなると、なんとも言えない高揚感に満たされた。
煮えたぎる劣情に流されるまま、俺達は身体を重ねた。
近所に声が漏れない様に、テレビの音を大きめにして、つい先程まで家族が食事をとっていたリビングで、男に身体を開く。
その恍惚とした幸福感と快感を一瞬にして吹き飛ばしたのは、予定を切り上げて帰って来た、母親の悲鳴だった。
その後は、修羅場だ。
母は泣き叫び、母の悲鳴を聞いて家に飛び込んで来た父は、汚物を見る様な目をして彼の事をボコボコに殴り付けた。
これが同意の上での情事だと知ると、俺にも拳が飛んできて。
彼はひたすらごめんなさいごめんなさいと謝罪の言葉を口にして、俺と目を合わせる事も無く、逃げる様に帰って行った。
それからは散々だ。彼からの連絡は無く、こちらから電話しても留守電に繋がりメールは返って来ない。
母親は俺が側を通る度に身体をびくつかせて息を詰め、父親は、まるで俺という存在が見えないかの様に振る舞う。
辛かった。
何が一番辛いかって、彼に会えていない事が。彼の声を聞けていない事が。
父親があんな事をしたから、怒っているのかもしれない。
思ったよりも怪我が酷くて、入院していたらどうしよう。
それでも優しい人だから、自分の事を責めているかもしれない。
俺が側にいてあげなきゃ。
彼の傷を癒してあげられるのは、俺しか。