momomon

個人メモ

死神×自暴自棄 リスカ・流血表現④

 
「…うっ…う…」

酷い頭痛に急かされ目を覚ますと、辺りは真っ暗だった。
地獄に来たのかと一瞬思ったが、よくよく目を凝らせば、自宅の風呂場であった。
どうやらあのまま気を失い、夜になってしまったらしい。
冷水のシャワーにずっと当てられていた体が、酷く冷たい。
先程まで血を垂れ流していた腕の傷は、もう血液の流出を終えた様だ。
腕にはまたひとつ、死にぞこないの証が増える事になる。

(そう言えば…、人が、居た気がする…)

あちこち痛む体を起こし、ぼやける視界で風呂場内を見回すが、それらしい姿は無い。
夢でも、みたのだろうか。
凍えそうになる体を擦りながら、水浸しの体で部屋へと戻る。
手探りで寝室の電気を点けた瞬間、目の前に先程の男が現れて、流石に心臓が止まった。

「……!」
「今日も死ねなかったか」
「…っ、何でそれを…!」
「さっき言ったはずだ。俺は死神だ」

死神だと言い張る彼は確かに、アニメやゲームに出てきそうな可笑しな容姿格好だ。
だが死神と言うのは、真っ黒なマントに大きな鎌という出で立ちが普通なんではなかろうか。
彼は金色の柔らかそうな髪に、金色の瞳に、白いコート、死神と言うよりはまるで。

「……別に通報とかしないから、用がないなら出て行って。それとも俺を殺してくれるの?」
「俺は人を殺したり出来ない」
「ははっ、死神なのに?……つーかこの茶番いつまで…」

ふいに、俺の直線上の壁に掛かっている鏡へと視線を向けた。
なんとなく視界に入れたそれには、間抜け面で目を見開く俺の姿が映っていた。
俺の目の前に立つ男の姿は、どこにも無い。
初めて直面する怪奇現象に、流石の俺も声が震える。

「……俺を、殺しに来たの」
「さっきも言った。俺は人を殺せない」
「じゃあ何しに…」


「お前の願いを、叶えに来た」

天使の様な死神は、表情ひとつ変えずにそう言った。

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