死神×自暴自棄 リスカ・流血表現⑦
願い事を言わないと離れないと宣言した通り、死神はずっと俺の側にいた。
たまにどこかに出掛けるのか、姿が見えない時もある。
しかし気付けばいつの間にか後ろに立っていて心臓が止まりそうになった、なんて事も多かった。
飯も食わないし風呂やトイレにも行かないし風呂にも入らないし、買い物をする事も無いから、生活費は一人の頃と全く変わらない。
俺的にはペットを飼っている気分だが、手間が掛からない分ペットより安上がりか。
ただ、おはようの代わりに「願い事は決まったか」、おやすみの代わりに「願い事は決まったか」と、耳タコにも程があるが。
そんな呪文にも最初の一週間は耐えたが、とうとう死神に「願い事は決まったか」と迫られる夢まで見るようになってしまって、ノイローゼ一直線だ。
「あーもう、願い事が決まったらちゃんと俺から言うから、黙ってろ!」
「しかし」
「分、かっ、た、な!?次、願い事は決まったかなんて聞いて来たら、霊媒師呼んで成仏させてやるからな!」
「死神はそんな事では成仏しないし、元々成仏する存在では無い。……だが分かった。そこまで言うなら、しばらくは黙っておこう」
俺の蓄積された鬱憤にようやく気付いてくれたのか、死神は相変わらずお面の様な表情のまま、俺の主張を受け入れた。
しかしまぁそうなると、俺の生活はますますおかしくなるわけだ。
一日中、何をするでもなく、よく知りもしない男が自分の傍らに突っ立っている訳なのだから。
そんな生活、ストレスも溜まりそうなもんだが、うざったいと思う事はあっても、耐えられないと思う事は無かった。
やはり、人間のそれとは違う雰囲気がそうさせるのだろうか。
ゆったりと詰み重なっていく時間の中で、ある雨の日の夕方も、死神は俺の後ろに立ち、台所でカップラーメンを作っている俺の事を痛いくらいに凝視していた。
「……」
「……」
「…食いたいのか?」
「食物の摂取は必要ない」
「じゃあ何でずっと見てんだよ」
「人間の行動に興味がある」
死神のその発言に、俺は少し驚いた。
以前喜怒哀楽など無いと言っていたから、何かに興味を持つ事も無いのだろうと思っていたから。
そういえば、死神はよく俺の行動をまじまじと観察していた気がする