momomon

個人メモ

死神×自暴自棄 リスカ・流血表現⑨

(そう言えば、最近リスカとかしてないな)

風呂で体を洗っている最中にふと自分の腕が目に入り、すっかりとかさぶたが無くなってみみず腫の様になった複数の傷跡を見ながら思う。
そう考えたら、今すぐリスカしなければ、と、強迫観念に駆られる事も無く。
むしろ、あの行為は一体何の為にやっていたのだろうかと、分からなくなってしまった。

(死神の世話で忙しいもんな)

世話らしい事をしている訳では無いのだが、そんな事を考える余裕すらないくらい、俺の頭の中には、いつもアイツが居る気がする。

(…は…はは…)

何だか、酷く懐かしい感じがするこの胸の苦しさは。
あぁ、どうして。
あの時に裏切られて、こんな思いをするなら二度とこんな感情を持つものかと決意したというのに。
俺はまた、
懲りもせず。




――――――――――

夕食用にと、近くのスーパーで出来合いの惣菜やレトルトのご飯なんかを買い込んで部屋に戻ってみると、死神が床の上に仰向けに横たわっていた。
俺はぎょっとして、荷物を放り投げながら死神の元へ駆け寄る。

「おっ…おい!!」
「…帰って来たのか」
「どうしたんだよ!具合悪いのか!?」
「俺には具合が悪くなる、なんて体調の変化は元々ない」
「じゃあ何で倒れてんだよ!」
「人間は夜になると、こうやって睡眠を取るだろう」
「あ、あぁ…」
「そういう事だ」

何がそういう事だよと頬のひとつでも叩いてやりたかったが、死神が倒れている理由を察してほっと息を吐いた。
多分これは今、人間の睡眠という行動を模倣しているのだろう。
いつだったかも、テレビに映っていたラジオ体操を見ながらたどたどしく真似ていた事があったし。

「人間達のいう夢とはどういうものなのだろうな。こうやって目を閉じても、俺はその世界へはいけない」

言い、死神はゆっくりと瞼を閉じた。
瞬き以外で目を瞑った死神を見るのは初めてだったから、その違和感に何だかムズムズする。
しかし、外国人の様な、色素の薄い、長い睫毛が影を落とすその様はとても綺麗で。
自分の心臓の音が徐々に大きくなっていくのが分かる。
それを必死に誤魔化す様に、俺は顔を背けた。

「…本当は人間に生まれてみたかった。…他の死神には、言えないが」
「……死神の癖にそんな事思うのかよ」
「前にも言っただろう。俺は本来死神が持っていてはいけない思考を持っている事があると」
「……人間なんて、ろくなもんじゃねぇよ」