momomon

個人メモ

王子×シンデレラ シンデレラパロディ①

俺の住んでいる国は、小さいながらも自然に恵まれていて、ご近所トラブルはあっても大きな争い事は滅多に起きない様なとても平和な所だった。
都会からすれば、この国の時間はとてもゆっくり流れている様に見えるだろう。
そんな毎日毎日をのんびりと過ごしている国民達の間に、衝撃が走ったのは数ヶ月前の事。
“当国の第一王子の妻となる者を募る”
国のトップである国王が、そんなチラシを、国中にばら蒔いたのだ。
貴族階級の人間が、見合いで伴侶を見つけようとする事はそんなに珍しい事ではない。
しかしその対象が俺達の様な平民にも向けられるというのは、異例の事だった。
しかも花嫁候補の条件が“性格が良い女”だけという手の広げっぷりに加え、その第一王子というのが、背が高くとろける様な甘いマスクの持ち主で、いつでも優しく爽やか、国民から愛される齢二十二歳のイケメンときた。
さぁ大騒ぎだ。
自分の娘を、自分の姉妹を、自分の母を、中には自分の嫁さえ嫁がせようと、応募する本人以上に周りの家族も色めき立っていた。
年頃の娘さんから、まだおしめも外れていないのでは無いかと疑わしい幼女に、腰の曲がったシワクチャのお婆ちゃん、性別が女かどうかさえ怪しい人も。
穏やかな町並みが一変。美容室や服屋は朝から晩まで女磨きに精を出す女性達で溢れ返った。
露店では惚れ薬なる怪しい液体まで売り出される始末。
お見合いは選考制で、写真で選ばれた百人だけが、王子と直接対面するお見合いパーティー兼舞踏会へと招待されるのだ。
小さな国とはいえ、何万という数の応募の手紙が送られたはずだ。それを百人に絞るのは相当な労力がいっただろう。
そうして、選ばれた百人の元へ招待状が届いたのが、数週間前の事。

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「わたし舞踏会には行かないわ」

義姉はそう言い、国王のサインが入った封筒を、テーブルの上へ雑に放った。
それは、あの、国の女性達が喉から手が出る程欲しがっていた、お見合い舞踏会への招待状。
俺は部屋の掃除をする手を止め、慌てて義姉の方へと歩み寄った。