momomon

個人メモ

王子×シンデレラ シンデレラパロディ④

 
写真か、パレードなどの時に遠目にしか見たことが無かったせいで一瞬誰だか分からなかったが、彼が俺の様な庶民とは別次元に住む人間なのだということはすぐに分かった。
俺はもう会わずに帰るつもりでいたので、気の抜けていたところを突かれ動揺を隠しきれない。

「うが…あ…こ、こんにちは…。この度はご招待いただきだきだき…!」
「いえいえこちらこそ、忙しい中を来てくれてありがとう」

蜂蜜色の、甘い色をした柔らかそうな髪が、キレ長の目にさらりと掛かる。
イケメンというだけでも緊張してしまうのに、彼の体から発せられる高貴なオーラに、俺は完全に怯んでいた。
おまけに彼の後ろに控える美女達が、怨めしそうに俺を睨んでいるのが恐い。
皿を持った手が、無意識にガタガタと震える。

「良かったら一曲踊ってくれませんか」
「えっ!おれっ、あ…いや…、わ、わたし、踊りが下手なので…っ」

地声はマズイと今更気付き、なるべく高い声で返事を、と思ったのだが、声が裏返って完全に裏目に出ている気がする。
俺の挙動不審さに対する笑いなのかダンスを踊れない事に対する笑いなのかは分からないが、周りの女性達が俺の方を見ながらクスクスと笑っている。
何だかこの場にいるのが途端に恥ずかしくなって、俺は手に持っていた皿をテーブルに置き、逃げる様にその場から立ち去ろうとした。

「…どちらへ?」
「えっ!?えっと、お、おトイレへ…」
「あ…それは、失礼しました」
「いえ!それでは失礼致しますわ!ごめんあそばせ…!」

もう、一体何キャラなんだ、俺。
慣れないヒールで人混みの隙間を縫いながら歩くのは辛い。
時折転びそうになりながら酔っ払いのごとくふらふらと歩く様は、どう見ても不審者であったろう。
広いホールで迷子になりながら、俺はようやく外へと繋がる扉を見つけ、いっそもう泣きそうになりながらそちらへ駆け寄る。
まともに歩行出来ず半泣きの俺はあまりに異様だったのか、外へ出ようとした時に警備員に止められたが、何とか数分で解放された。