momomon

個人メモ

王子×シンデレラ シンデレラパロディ⑦

「うっ、わ…!!!」


俺は思わず、力の限り王子様の体を突飛ばす。
その衝撃で、王子様がベンチから地面へと倒れてしまった。
俺は、全身から血の気が引いていくのを感じていた。

えっ、これって暴行罪…?

暴行罪になるの?

だって突然キスされたから、だって、正当防衛でしょこれ…!

俺は顔を赤くしたり青くしたり、この場合どうすれば良いのか、忙しなく回転する思考が、もう限界ですと煙を上げた。


「ごっ、ごめんなさい…!!」


焼け付いた思考回路が導き出した選択は、“逃亡”だった。
俺は手でかつらを押さえながら深々と頭を下げ、立ち上がろうとしていた王子様に背を向けすぐにその場から逃げ出した。

俺は足は遅くない方だと思うのだが、初めて履いたハイヒールではまともに走れる訳もなく。
義母に怒られるとは思ったが背に腹は変えられない。
俺は途中で靴を脱ぎ捨て、裸足のまま城を後にした。

城の門には護衛の兵士が居たが、門を通る時だけ平静を装い、角を曲がった後は猛ダッシュだ。

幸い長いスカートのおかげで、ドレスに裸足という不審な状態には気付かれなかったし、兵士が後を追って来る様子も無く、無事に家まで辿り付いた。

ボロボロのウィッグに汚れたドレスになくした靴に、義母と義姉にはこれでもかという程怒られたが。


(王子様大丈夫かな……。怪我してたら、どうしよ…)


古ぼけたベッドの上で薄い毛布にくるまり、湧き上がって来るのは後悔ばかり。
逃げずに手を差し伸べれば良かった。驚いたんですごめんなさいってちゃんと謝れば良かった…。
今更考えても仕方の無い事だけれど。


(ていうか俺…な…なんで急にキスされたの…)


もしかして、貴族の間ではただの挨拶だったりするのかな。
だって王子様、随分とキスに慣れてるみたいだった。
すごいスマートだった。

大体王子様がそんな、出逢ったばかりの女に(実際は男だけど)体目当てで手を出すなんてあるはずがない。

あぁ、今日の朝には国中に指名手配されていたらどうしよう。
そんな事を考えて唸っていたら、結局まともに眠る事も出来ずに朝を迎えてしまった。






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