ホスト×ウェイター①
「ねぇアツシ、アツシはどんな子が好きなの~?」
「いちいち聞くなよ、決まってるじゃん。…お前」
「あはは、やだぁ、嘘ばっか~!」
あぁ嘘だよ、と言えたら、どんなに気分が良いだろうか。
毎夜女達が男を求めてやって来るホストクラブ。
酒と香水とタバコの混じった濃密な匂いに、鼻を摘まみたくなる。
気持ち悪くなるまで胃の中に酒を流し込み、その口で女を喜ばせる為の嘘を吐く。
No.1という地位に居たものの、感じるのはいつも空虚感だけだった。
俺はテーブルの上に置かれた空のボトルを持ち、近くに居たウェイターを呼びつける。
彼は困った顔で辺りを見回し、手が空いている奴が居ないのが分かると、渋々といった表情で俺のテーブルにやって来た。
「これ、邪魔だから持って行って」
「はい…」
ボトルを渡す時に、わざと手に触れる。
「!」
一秒にも満たない時間だったが、彼はそれだけでビクつき、ボトルを握り締めた手を慌てて引いた。
「他に、何か…」
「今は良い。また呼ぶから」
「…分かりました」
逃げる様に去っていく後ろ姿をうっとりと眺めながら、彼の手の感触が残る指を唇に押し付ける。
(可愛い…)
腕時計を確認するも、閉店まであと2時間もある。
(早く、触りたい)
あぁ、早く
俺を癒して。