momomon

個人メモ

死神×自暴自棄 リスカ・流血表現③

流水音と共に、腕の傷から流れ続ける鮮やかな赤。
どれくらいこうしているのか。ぼうっとした頭では分からない。

(血って、何リットル出たら、死ぬんだろう)

あの事件の後、両親は俺をすぐに家から追い出した。
高校も辞めて、用意されていたのは実家から遠く離れた寂れたアパートの一室。
俺の口座には、両親か毎月毎月事務的にお金が振り込まれ、それが俺を生かしていた。
こんな息子、さっさと縁を切ってしまいたいだろうに。せめてもの情けというやつか。
テレビをぼんやりと眺め、腹が減ったら近くのスーパーで出来合いの物を買う。またテレビを観て、寝て、起きる。
毎日、その繰り返し。
生きる気力も無いが、死ぬ度胸も無い。
たまにこうやって自分の腕を傷付けては、うっかり出血多量で永遠の眠りにつく事を期待するばかり。
現実と、夢の狭間をふわふわと漂っている様な、不思議な感覚。
自分の世界なのにまるで違う他のどこかに迷い込んだ様な。
だから、瞼をうっすらと開いた時に目の前に見知らぬ男が立っていても、俺はさほど驚きはしなかった。

「……なに?泥棒…?幽霊…?」
「……」

俺の問いに、男は何も答えない。
太陽の様な金色の瞳が、じっと俺を見つめている。

「泥棒なら…部屋の中から好きな物持って行きなよ…。幽霊なら…、俺もそっちの世界に連れて行って…」

目の前に全く知らない男が立っているというのに、俺が平然としていられるのは、血が足りなくて頭がぼうっとしているから、と、男から、殺気や困惑など、人間らしい空気が感じられなかったからか。
息遣いは感じるのに、まるで、人形の様。
男は一度、長い睫毛の生えた瞼をゆっくりと閉じ、そして再び金色の瞳を露にした。

「俺は、お前達の言葉で言う、死神だ」

……なんだ、やっと、お迎えが来たのか。


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